人生に迷っているわけではありません。
努力もしてきましたし、それなりに前に進んできた実感もあります。
それでも、ふとした瞬間に、言葉にできない空虚さを感じることがありました。
そんな状態の私に強く刺さったのが、『世界の果てのカフェ』という一冊です。
この本は、派手な成功法則や具体的なノウハウを教えてくれる本ではありません。
物語の中心にあるのは、カフェのメニューに書かれた、たった三つの問いです。
- なぜ、あなたはここにいるのか
- 死を恐れていますか
- 満たされた人生を生きていますか
中でも、私の心を最も強く揺さぶったのは、最初の問いでした。
なぜ、あなたはここにいるのか
この問いがはっきりしていないままでは、どれだけ頑張ってみても、忙しくしても、本当の意味で満たされた人生を送ることは難しいのではないか。そう、多くの人はそれぞれ一生懸命生きているけれども、本当に幸せだと感じている人は少ないように感じます。少なくても私が今まで見てきた人の中には、自分の人生に大変満足している人はほとんどいませんでした。きっと、自分を本当に満足させてくれることとは違うことに振り回されてしまっているのではないでしょうか。
私たちは日常の中で、「何をするか」「どうやるか」は頻繁に考えます。
一方で、「なぜそれをするのか」という問いは、忙しさの中で後回しにされがちです。
気がつくと、誰かが求める役割をこなし、社会が期待する正解を選び、失敗しないための行動を優先している。
それ自体が悪いわけではありません。
ただ、その状態が長く続くと、人生の主語が、いつの間にか「自分」ではなくなってしまいます。自分が本当にやりたかったことを忘れてしまい、やらなくてはいけないことに追われ、心をすり減らしていくことになるんです。
一時的な満足と、持続する満足の違い
この本を読みながら、私は脳科学の視点でも考えていました。
仕事で成果を出したとき、評価されたとき、新しい刺激に触れたとき。その瞬間は確かに楽しく、気持ちがいいものです。脳内ではドーパミンが多く分泌されている状態だと思います。
しかしドーパミンは、「満足」をもたらすというよりも、「もっと欲しい」という欲求を強める物質です。同じ刺激では物足りなくなり、より強い刺激を求め続ける構造になっています。
このサイクルの中では、一時的に満たされたと感じることはあっても、どこかで限界が来て、空虚な気持ちが顔を出します。
例えば、ギャンブルに手を出したり、スマホでネットサーフィンしたり、SNSを見たり、爆買いしたり、ジャンクフードをたくさん食べたり、酒を飲んだりするなど、一時的な快楽を得られるかもしれないですが、際限なくより強い刺激を求めるようになり、結局は自分を破滅させてしまう人も多くいます。
だから私は、一時的な快楽と、持続する満足はまったく別のものだと考えています。
では、『世界の果てのカフェ』が示している「持続する満足」とは、何なのでしょうか。
内なる声に気づくということ
この本を通して、私が一つの答えとして受け取ったのは、自分の内なる声に気づくことでした。
人は本来、心からやりたいことや、好きでたまらないことを持っているはずです。
ところが、社会の決まりや周囲の視線、「こうあるべきだ」という思い込みに縛られるうちに、その声が少しずつ聞こえなくなっていきます。
そして気づけば、誰かの期待に応えることで毎日が埋まり、自分が本当は何をしたかったのか分からなくなってしまう。
そんな状態で「満たされた人生を生きていますか」と問われても、素直にうなずくことは難しいのではないでしょうか。
だからこそ、自分の内側にある小さな声に耳を澄ませることが重要なのだと思います。
この本が持つ危うさについて
ただし、正直に言うと、この本には危うさもあります。
「内なる声に従えばいい」
「本当にやりたいことをやればいい」
これらの言葉は、受け取り方を間違えると、自己中心的な生き方を正当化するものにもなり得ます。
世の中には、自分の都合を最優先し、他人を傷つけても構わないと考える人もいます。
その人の「内なる声」を無条件に肯定すれば、人生が良い方向に向かうとは限りません。
その意味で、この本は、ある程度人生経験を積み、挫折や失敗を通して自分を省みてきた人にこそ、正しく届く内容なのではないかと思います。
忙しさの中で自分を見失いかけている人へ
それでも、この本は私にとって、非常に刺さる一冊でした。
なぜなら私は、本当にやりたいことを忘れかけ、日々の忙しさに忙殺されている状態だったからです。
この本は、「人生を大きく変えなさい」とは言いません。
むしろ、こう問いかけてきます。
「1日の中で、少しでも自分に正直な時間を持っていますか。」
私は、1日1時間でもいいから、自分が好きなことに集中する時間を持ちたいと思うようになりました。
生活がある以上、急に仕事を辞めたり、環境を大きく変えたりすることは難しいです。
それでも、時間の使い方を少し変えることはできます。
その小さな積み重ねが、自分が何を大切にしているのかを思い出させてくれるはずです。
未来ではなく、「今この瞬間」を生きる
この本を読んで考え続ける中で、私は自分の生き方の癖にも気づきました。
私はこれまで、常に未来のために頑張り続けてきました。
「今は大変でも、将来のために」
「この努力は、きっと後で報われる」
そうやって生きてきた結果、意識はいつも未来にあり、「今この瞬間」は通過点になっていました。
だから今、私は思います。
未来のためではなく、今この瞬間そのものを生きたいと。
1日の中で、心が揺さぶられるような体験を少しでも味わう。
不思議なことに、それが結果として未来を形作っていくようにも感じています。
もちろん、今に全集中するのは簡単ではありません。
気がつけば、また未来のことを考えてしまいます。
それでも、「戻ってくる場所」が分かっただけでも、この本を読んだ意味は大きいと感じています。
人生の速度を落とすための一冊
『世界の果てのカフェ』は、人生を劇的に変えるための本ではありません。
この本がしてくれるのは、人生の速度を少しだけ落とすことです。
未来を見すぎて疲れてしまった人が、もう一度「今」に戻るための装置。
私はこの本を、そう受け取りました。
読み終えたあと、何かを達成したわけでも、すべての答えが見つかったわけでもありません。
それでも私は、「今日はちゃんと生きた」と感じられる日を少しずつ増やしていきたいと思うようになりました。
それだけで、この本を読んだ価値は十分だったと感じています。
特に、毎日忙しくしているけど、満たされていない気がする30代〜40代くらいの方におすすめしたい一冊です!

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