『徒然草』 心に響く言葉10選

 私は、食事・睡眠・運動にとても気を使っています。元々体が強い方ではなく、風邪を引きやすかったり、体調を崩しやすいというのもあって、健康であるための努力は人一倍しています。そう、私は健康オタクなんです。

 ただ、今回の記事は、「けんこう」といっても、兼好法師(吉田兼好)が書いた『徒然草』をご紹介していきます。みなさん名前は知っていると思いますが、最後まで読んだことのある方って意外と少ないのではないでしょうか?実際に読んでみて、学びが多い本なので、気になる方はまず本記事をお読みいただけると幸いです♪

徒然草とは?

 兼好法師(1283~1350頃?)が鎌倉時代末期に書いた随筆集。『枕草子』と並ぶ随筆文学の傑作とされています。
 ちなみに、随筆とは、心に浮かんだことや見聞きしたことなどを思いのままに書いた文章のことです。イメージとしては、人に見せる日記のような感じですかね。現代で言うと、雑記ブログも近かったりするのかもしれないです。
 内容としては、鴨長明『方丈記』のような一貫性のある文章ではなく、多様な事柄について兼好が感じたことをありのままに書いている。この自由気ままさが読む人の視野を広げるとと同時に、飽きさせない仕組みとなっているのです。

作者 兼好法師とは?

 兼好法師がどういう出自のどういう人でどういう経歴を持っていた人物であったのか、ということについては、新しい研究が出てきて、これまで言われてきた伝記的なことがあまり当てにならないことが分かってきました。そのため、正確な人物像については、今後の研究を待つのがいいのかもしれないですね。

 ただ、『徒然草』を読みながら、兼好法師の人物像を想像していくのも面白いのではないでしょうか。

徒然草の心に響く言葉10選

 『徒然草』は何かについて一貫した主張がある訳ではないので、要約するのは困難です。全部で243段(序段を入れると244段)に分かれているので、その中から私が重要だと思った部分を10に絞ってご紹介していきます。

第25段 この世は無常である

「何事にもあれ、自分が見届けることのできない後世のことまでをあれこれと考えおいても、しょせんは儚いことにちがない」

 ここでは、この世の無常観が語られています。例えとして、栄華を誇った 藤原道長の邸宅や出家後の住寺が挙げられている。どんなに栄えたとしても、いつかは退廃していく。

 この言葉で感じることは、地位や名声、財産などは取るに足らないものであるということ。人はそれらを得るためにあくせく働き、命を削っている。特に、日本人を見ていると仕事中心の生活で、その他の大事なものを犠牲にしている人が多いように感じる。

 もちろん、生きていくためにはお金は欠かせない。私も家族の生活のためにあくせくと働いています。その中でも、「家族や友人との時間」、「自分の健康」、「本当にやりたいこと」などを大切にすべきなのではないでしょうか。

 つまりは、地位や財産などのことばかり考えないで、本質的に自分にとって大事なことを見極め、そため時間や労力をつぎ込んでいくべきだと言えます。

第41段 死を意識して生きる

我々とていつ死がやってくるか…それは今すぐかもしれぬぞ。そんなことを忘れて、こうして競馬見物なぞに1日を費やす、愚かなることは、あの法師よりもずっと甚だしいものを

 これは、兼好が5月5日に上賀茂神社かみがもじんじゃ競馬くらべうまの神事を見物しに行ったときのこと。人がたくさん集まっていて、なかなか見ることができない様子でした。
 そんな時、木に登って、その木の股にひょいと腰をかけて見物している法師がいた。法師は、木につかまりながらすっかり眠ったり、ハッと目を覚ましたりを繰り返しているのです。落ちたら大けが!へたすると死んじゃいます!
 それを見ていた人たちが、「愚か者だ。あんな危ない枝の上で寝ているなんて!」と言って、バカにしていた時、兼好法師が放ったのが上記の言葉です。なかなか鋭い指摘ですね。

 さて、みなさんはどれくらい生きると思っていますか?
 特に、若い方の多くは「死」なんて全然意識しないですよね。大体80歳くらいまで生きるんじゃないかなと考えていたりします。全然先の話だと感じているのではないでしょうか。現代では、長く生きる可能性が高くなってきたため、人生は長いと決めつけて、のんびりだらだらと過ごしがちではないでしょうか。

 しかし、最近の能登半島の地震のような災害が起きたり、病気や事故でいきなり死んでしまうことはあります。少なくても、私たちには寿命があり、いつか死ぬのは確実なので、死に向かって一歩一歩進んでいるのです。さらには、死なないまでも健康じゃなくなってしまい、思うように体が動かなくなることもあります。

 そこで、ひすいこたろう さんが書かれた『あした死ぬかもよ?』という本も参考になるのですが、自分の命が長くない、極端に言うと、明日死んでしまうとして、「今自分がやっていることをするか?」ということを自問自答してみるべきなんです。
 明日死ぬのに、やりたくもない仕事をだらだらとやりますか?出世のために上司にゴマをすりますか?スマホでくだらない記事を呆然と見ますか?パチンコとか行って時間を潰しますか?身近な人と喧嘩しますか?おそらくそんなことはしないはずです。
 きっと、やりたかったことをやってみたり、家族や親友との時間を過ごしたりするのではないでしょうか?今一度立ち止まって深く考えたいものですね。

第75段 一人で心静かにいられるのは最高の時間

なすこともなく独り寂しくしていることを悲観的に思う人は、いったいどういう心であろうか…

 私たちは、一人で寂しくしていることを「つまらない」とか「恥ずかしい」と思いがちである。しかし、兼好は一人で寂しく過ごし、心を平安にすることこそ、生きている楽しみを感じられるのだと考えている。

 私もそれには強く共感する。若いうちは一人でいるよりも、友達などと一緒にいた方が楽しかったのかもしれない。一人でいることへの不安もあったりした。しかし、仕事を始めて、結婚して、子供も生まれると、一人の時間を確保できなくなってきました。いつも何かやることに追われて、疲れ果てている。そんな方は多いのではないでしょうか?

 そんな時は、自分が考えていることを書き出しながら整理をしたり、自然を感じられる場所でひたすら歩いたり、温泉やサウナに行ってリフレッシュするなど、一人で心落ち着く静かな時間を楽しんでみてはいかがでしょうか!?

第108段 わずかな時間でも大事にすべき

ほんの暫くの間でも、目前の一刹那が過ぎるのを惜しむ心がない場合は、生きていても死人と同じである。

 これはなかなか厳しい言葉ですね!時間を無駄に使っている人たちは、死人と同じようなものだと言っている。いい方は厳しいものの、的を得た意見ではないでしょうか?同じようなことを古代ローマの哲学者 セネカも述べています。

 人は、仕事、食事、睡眠、家事など、やらなくてはならないことに追われている。
 余ったわずかな時間を、くだらないテレビや動画を見たりして浪費していないだろうか?他人のSNSを見て嫉妬していないだろうか?必要以上に寝てばっかりいないだろうか?会いたくない人と一緒に時間を過ごしていないだろうか?未来への不安や過去への後悔にストレスを感じていないだろうか?

 人生というのは、「今この瞬間」の積み重ねです。「今」何をするかは、自分自身で選ぶことができるんです。もちろん、やらなくてはいけないこともあるでしょう。しかし、自分の人生に後悔をしないためにも、しっかりと自分と向き合って、本当に自分がやりたいことを考える。そして、考えているだけでは始まらないので、どんどん行動に移していくべきなのではないでしょうか!?

第150段 何かの道を極めていく人

いまだまるっきりの下手くそのうちから、上手な人のなかに交じって、バカにされ嘲笑されるのにも恥じることなく、平然として長く稽古に精を出す人

 ここではブログを例にして解説していきます。
 大体の人は、最初のうちはブログを上手に書くことができません。そして、人の目を気にして、完璧なものしか投稿できない人はなかなか上達しないです。上手になっていく人の特徴としてよく挙げられるのは、どんどん投稿して、他人からの評価を受けつつ、改善していける人なんです。その過程において、もっとブログがうまく書ける人から意見を聞いたり、ブログの読者からのコメントを参考にしたりします。それらの意見をもらう際には、バカにされたりすることもあるでしょう。それでも気にせずに、成長に必要なものは取り入れていくんです。

 このように、「どんどん挑戦する」、「他人の意見に耳を傾ける」、「改善を何度も何度も繰り返す」という行動が、時代を越えてどのような分野を極めていくにも重要だと言えます。

第157段 心は外からの刺激で動く

筆を執れば、つい何かを書いてしまう。楽器を取れば、音を立てようと思う。盃を取れば、酒を呑むことを思うだろうし、サイコロを取れば博奕を打とうと思う…

 みなさんも自身の行動などによって心の持ちようが変わったことはありませんか?

 悪いことで言えば、勉強机に漫画を置いておくと、勉強をサボって漫画を読みたいと考えてしまう。お菓子が見えるところにたくさんあると、ついつい食べてしまいたくなる。周囲の人や環境に文句ばかり言う人たちと交わっていると、自分も不平不満ばかり口から出てきてしまう。

 つまりは、自分が触れるものには注意を払うべきなんです。例えば、私はブログの上達を目指していますが、同じような目標を持っている人たちと関わったり、執筆や下調べを集中して行うために机にスマホや漫画などを置かずに整理したり、忙しい日でもパソコンを開いてちょっとでもブログを進める。

 そのようにしていくことで、ブログを続けられるようにしています。ブログを書くことは楽しいのですが、日々の生活が忙しいので、気を抜くと記事の更新が全然できていないという事態にもなりかねません。そのため、兼好の言う「外からの刺激」を活用していくのも大事だと考えています。もちろん、どの分野でも活かせることなので、みなさんも意識してみてください。

第171段 灯台下暗しになってはならない

何事も、自分の外に向かって結果を求めるべきではない。ただ、身近なところを正しく見ることが大切だ。

 例えば、あなたが受験生であった頃を思い浮かべてください。あなたには絶対に負けたくないライバルがいます。その時に、良くないのはライバルの足を引っ張ろうとすること。「一緒にサボろう」ともちかけたり、悪い噂を流して精神的に攻撃したりする人などいますよね。それがここで言う「外に向かって結果をもとめること」なんです。一方、ライバルに負けないように、自分がしっかり勉強をするというのが正しい考え方です。勉強時間を確保し、やり方も工夫し、体調やモチベーションを上げたりする。そのように、遠くの他人を変えようと考えるのではなく、自分を中心とした部分を変えようとする、そうすることで成功をつかむ可能性が高まっていくのです。

 人というものは、そんなに大したことはできません。他人を変えようとしてもうまくいかないことが多いですし、あまりに不確実です。多くの人はこのことに気づかず、他人など自分では変えられないものを変えようとして思い悩んでいます。自分自身や自分の身近な環境であれば、努力次第で変えことができる可能性が高いのです。

第175段 酒との付き合い方

なにか事あるごとに、まず酒を勧めて、無理強いに飲ませて興がるという事などは、さていったいなぜそんなことをしたいのか理解のほかである。

 みなさんは飲み会とか好きですか?

 私は、場合によりけりだと思ってます。学生の時はたくさん飲んで、騒いでみたいな感じでした。そこでは、兼好が否定しているような「無理強いに飲ませて興がる」ようなことが日常茶飯事でした。今思うと、何やっていたんだか…と感じます。
 最近では、コロナの時期を経て、飲み会の機会が減りました。それで気づいたことは、飲み会がなくなると、時間やお金に余裕が出てくるということです。よく考えると、飲み会って高コストですよね!?ただ、兼好の言うとおり、心の通った仲間と楽しく飲むのは、人生に彩りを与えてくれるのではないでしょうか。

 つまりは、やたらとお酒を飲んで騒いだりするのではなく、本当に参加したい飲み会を厳選し、それを心から楽しむのが大事なのかもしれません。

第188段 一事を必ず成就するなら、他のことを諦める覚悟を持つ

一生のうち、主だった希望のあれこれの中で、そのどれがもっともやりたいことだろうかと良く思い比べて、第一に重んずべきことを思い定め、余事は思い捨てて、ただその一事のみに出精すべきである。

 この言葉についても、どの分野にも当てはまるものかと思います。

 ここで思い出したのが、プロ野球で、ヤクルトや阪神などの監督をされていた野村克也さんが書かれた「超二流」という本です。プロ野球選手の中でも、今で言うと大谷選手のように何でもできてしまう「超一流」は存在します。超一流は才能にも恵まれているので、普通の人は同じようにはなれない。しかし、同じようになろうとして失敗している人が後を絶たないと言われています。
 それでは、二流以下の人たちはどうすればいいのでしょうか?野村さんの答えとしては、自分にできること、向いていることを見定め、そこを伸ばすように徹底的に努力をするということです。それによって、「超一流」とも戦える「超二流」になれるのです。野球で例えると、誰よりも守備がうまい人、バントを必ず成功させる人、盗塁をほとんど失敗しない人などは重要な戦力ですよね。場面によっては、超一流よりも重宝されるときがあります。

 ビジネスでも同じようなことが言えます。うまくいっている人の話でよく出てくるのは、自分の苦手分野はしっかりと認め、それを他人にお願いする。その分、自分が得意なことで、組織や他人に貢献していくということです。
 うまくいかない人ほど、全部自分でやらないといけないと思っているものです。私も人に仕事を頼むのは苦手ですが、意識的にチャレンジしてみたいと考えています。

第190段 結婚なんてするもんじゃない

妻というもの、これこそは男の持つべきではないものである。

 これは、役に立つとか、共感したという訳ではないのですが、兼好の考えが分かるので採用しました。兼好いわく、どんな女の人でも、ずっと一緒にいると、嫌悪感が湧いてくる。だから、別のところに住んで、時々男が女のところに通うのがお互いにとってよろしいとのことです。
 芸能人の男性とかの結婚が遅いことを考えると、同じように考えている人が意外といるのかもしれないですね。個人的には、アラフォーともなると、恋愛に心躍らせているよりも、仕事や歴史の研究に力を入れていきたいと感じています。そもそも、これぐらいの歳になるとモテる気がしません…

 さて、兼好は女性に対して厳しい見方をしている部分があるので、現代の人からすると、「ちょっと言い過ぎではないの?」と感じられるところもあります。だからと言って、兼好=悪というのは、極端な考え方です。ギリシアの哲学者 ソクラテスも女性蔑視とも受け取られる発言があったりします。大事なことは、その人の全体的な行動・発言や時代背景も考慮して判断することです。
 最近では、芸能人のちょっとした発言が問題となり、SNSなどで人格を全否定されたりすることも多くあります。みんないいところも悪いところもあって、考え方も違います。広い視野と温かい心でお互いのことを認めていけるような社会になるといいですね。

まとめ

 ここまでいかがでしたでしょうか?ためになるなぁと思った言葉がきっとあるのではないでしょうか?
 兼好法師という人物が、気ままに書いた随筆が時代を越えて読み継がれているということは、やはりどの時代にも通じる普遍的な真理があるのでしょう。もちろん、『徒然草』がすばらしい作品だからと言って、全てが正しいわけではないです。時代に合っていない部分や、老人や女性への厳しさなど賛否が分かれるような部分もあります。

 本書については、本当に様々なことが書かれているので、それぞれ心に残る部分が全然違うのではないかなと思います。みなさんが心に残ったところも教えていただけると幸いです。

 それでは、本記事をきっかけに『徒然草』をお読みいただけると幸いです♪

ちなみに、徒然草の他に、方丈記もおすすめなので、気になる方は次の記事もお読みいただければと思います。

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