07 「【奈良・春日大社】神鹿と朱塗りの社殿に出会う|世界遺産の神秘

奈良

 東大寺を出発して、春日大社に向かう。

 前回までの記事でも書いたとおり、その日は興福寺と東大寺の広い境内を回ってきたので、少し疲れが見え始めている…それでも、春日大社も奈良の定番観光スポット。事前の情報では、赤色の社殿や約3000基の灯籠が美しいようだ。せっかく奈良に来たのだから、行かない訳にはいかない。

 春日大社に到着してみると、海外からの団体客をはじめ多くの観光客がいものの、どんな景色に出会えるか楽しみである♪

 それでは、春日大社についてご紹介していく。

東大寺から春日大社に向かう途中に、可愛い小鹿を発見!!

春日大社とは?

 春日大社は、春日山麓の森の中に朱塗りの優雅な社殿と境内に61の摂末社が鎮まる古社であり、世界遺産に登録されている。平城遷都の際、常陸の鹿島神社から白鹿に乗ってきた武甕槌命を春日山の頂に勧請したのが始まりとされている。そのため、奈良では鹿を神の使いとして大切にするようになったと伝わる。

 神護景雲2年(768)現在地に社殿が造営され、香取神宮の経津主命と枚岡神社の天児屋根命・比売神をあわせてまつるようになり、貴族から庶民にいたるまで崇敬を集めた。

 なお、当時、奈良の平城京は藤原氏が大きな力を持っており、氏神を祀るために創建されたのが春日大社である。ちょっと前に散策した興福寺と同様に、藤原氏と関係の深い場所なのである。

境内を散策

 まず、春日大社の境内に着くと、鹿の像を発見できる。先ほど、春日大社のはじまりのところでご説明したとおり、神の使いとして鹿が大事にされているようだ。「何で鹿の像をつくっているんだよ!」とか言うと、しかられてしまうかもしれない…

 次は、中門・御廊の様子。赤を基調とした美しい建物である。特に、釣灯籠が並べられている様子はとても心を惹かれるものがある。

 なお、灯籠は「光を神に捧げる」行為の象徴とされる。そして、神の道を照らす、闇を払うという意味も込められていった。そして、藤原氏の権勢と信仰の厚さを示すものとして、このように灯籠の数が増えていったと考えられている。

 その他、境内全体的にきれいに整備されていて、思わず写真を撮りたくなる。

 下の写真は、若宮。
 本社祭神の天児屋根命と比売神の子・天押雲根命をまつる。知恵授けの神として信仰されている。

 安倍仲麻呂の歌碑が境内にあった。意味は次のとおり。
 「遥かな大空を仰ぎ見ると月が出ていた。あの月は春日の三笠山に出ていた月と同じなのかなあ。」

 遣唐使として、唐に派遣されていた仲麻呂が、帰国する時の餞別の宴で詠んだ歌とされる。やはり、かつては日本と中国の行き来も簡単ではなかったこともあり、故郷に帰れる予定であったのが嬉しかったのだと想像できる。

 ここで、安倍仲麻呂についても紹介する。奈良時代に活躍した日本の貴族であり、遣唐使として唐(中国)に渡り、一生のほとんどを中国で過ごした人物。唐に渡った仲麻呂は、その学才を認められて科挙に合格し、唐の官僚として出世した。唐の皇帝玄宗に仕え、名前も「朝衡(ちょうこう)」と改められる。最終的には左散騎常侍(ささんきじょうじ)という高位の官職にまで登りつめた。

 仲麻呂は何度か日本への帰国を望みたが、政治的な事情や遭難などにより果たせませなかった。特に754年に帰国を試みた際、乗っていた船が暴風で安南(現在のベトナム)に流されてしまい、結局再び唐に戻ることになった。その後は帰国を断念し、唐で生涯を終えることとなる。先ほどの歌とも関わるところであるが、あれだけ日本に帰りたかったのに帰れないなんて、なんか切ない…

 仲麻呂は文才にも優れており、『懐風藻』や『万葉集』に彼の漢詩・和歌が収められている。特に有名なのは、故郷・日本を思って詠んだとされる先ほどの写真の歌である。

まとめ

 普段はお寺を中心に散策をしているので、神社を訪れる機会は少ないが、お寺とはまた違った美しさがあった。特に釣灯籠が一列に

並べられている様子は優美であった。

 また、奈良で鹿がこんなにも愛されている理由を知ることができたのは、非常に有意義であった。鹿があまりに多すぎて困惑していたが、それはしかたない…

 さて、その日は、朝早くから長く歩き回って、正午を過ぎようとしている。とりあえず次の目的地である新薬師寺へと向かうことにする。その際に、「中の禰宜道ねぎみち」という道を歩いて行く。人が多い観光スポットから、急に自然豊かで人気が少ない道に出たので、そのギャップに驚かされる。

 見てのとおり、自然に囲まれているので、夕方以降だと一人で歩くのは怖いくらいである。日中でよかった。ただ、観光地の喧騒から離れて、心穏やかな時間を過ごすことができて、個人的には最高であった。

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