みなさんは歩くことが好きですか?
私は、普通の人より歩くことが多い。毎日の通勤で片道合計35分くらい歩くし、朝テレワークの日は40分くらい歩いてから仕事を始める。休日も予定がなければ、朝と夕方に40分くらいずつ歩く。
歩くことが習慣でない方にとっては、なぜそんな面倒なことするの?と思われるかもしれない。だけど、私にとって、歩くこと自体が目的になっている。歩くと気分が良くなる。その他にも、頭がクリアで冴えわたり、アイデアも生まれやすくなっている。以前は、何をやるのも面倒なこともあったが、今は面倒なことがかなり少ない。どんなことでも意欲的に取り組める感じがする。風邪もあまりひかなくなった。

これは、ただの思い込みなのか?確かに、私は筋トレなどの運動もしたり、食事にも気を使うなど、いろいろ取り組んでいる。でも、やっぱり歩くことは気分がいいし、あらゆる面で効果を発揮しているという実感がある。
今回は、歩くことの効果について、自分の主観に頼らず、科学的に検証してみたいと思います。特に、今まで歩く習慣がない方にとっては、人生を変えるような発見があるはずです!!最後までお読みいただけると幸いです。
結論
時間がない方のために、結論から述べたいと思います。
歩くことは、脳機能の向上・健康面などで大きなメリットがある
特に、おすすめの歩き方は、次のとおりです。
30分から1時間程度、自然の中で、ただ歩くことに集中(マインドフルな状態)して、早歩きをする習慣をつける

とにかく、歩く習慣が大事です。できれば、自然の中であったり、早歩きだったりを心がけるとなお良いという感じですかね!!
健康面でのメリット
歩くことは健康にいいと言われてますよね。古代ギリシャの医師で、「医学の父」とも呼ばれているヒポクラテスも「歩くことこそ、人間にとって最良の薬である」という名言を残しています。ヒポクラテスは、紀元前4~5世紀の人なので、そんなに昔から歩くことは体にいいとされていたのに驚きですね!!

では、具体的にどんな健康効果があるのでしょうか?
生活習慣病の予防
①血圧・血糖値の安定
歩行は、血圧と血糖値の両方を安定させる効果が繰り返し示されています。複数の臨床研究および実験研究の証拠により、歩行は心血管および代謝の健康を改善するための効果的で安全かつ手軽な方法であることが示されています。
血圧を安定させることで、血管への負担を減らし、脳卒中や心筋梗塞、腎障害など生活習慣病の発症を防ぎます。また、血糖値を安定させることで、インスリンの過剰分泌を防ぎ、動脈硬化、疲労・集中力低下を抑える効果が期待できます。

特に、私は若いころに糖分を多くとっていたのですが、朝に菓子パンとあまりコーヒーを摂取したり、ご飯を大盛食べたり、おやつも食べるなどしていました。その時は、日中眠気が強くて、毎日がつらかったです。今は、糖分をかなり抑えており、散歩などを定期的にしているので、体調もかなりいい状態です。血糖値の安定は大事ですね♪
【参考論文】
・The Effect of Walking Exercise on Blood Pressure and Blood Glucose in the Elderly(著:M. Rizka, R. L. Ambardini, D. Yudhistira/2022年)
・Increasing walking steps daily can reduce blood pressure and diabetes in overweight participants(著:Kornanong Yuenyongchaiwat 他、2017/2018)
②心疾患・糖尿病リスク低下
こちらは、①の結果とも言えます。歩行することにより血圧を下げることで、血管への負担を減らし、心疾患のリスクを下げることができます。また、血糖値を安定させることにより、糖尿病のリスクも下げられるのです。どちらも恐い病気ではあるので、たくさん歩いてリスクを押さえたいですね!

【参考論文】
・「Effects of Walking on Coronary Heart Disease in Elderly Men with Diabetes」(Kimata, Willcox, Rodríguez, Geriatrics, 2018)
免疫力アップと炎症抑制
①適度な有酸素運動が免疫細胞を活性化
30分程度の速歩は、がん細胞やウイルス感染細胞の排除をしてくれるナチュラルキラー(NK)細胞などの循環を増加させる。これらの効果は短期間で消えるが、急性的な免疫活性化反応を示しています。一時的な変化ではあるものの、この「短い活性化」を繰り返すことが重要です。継続的に歩行を行うことで、体全体の免疫機能が強化されると考えられています。
【参考論文】
・Nieman & Henson, 2005; 2004
②慢性炎症の抑制効果
3か月間の研究では、1日1万歩以上歩いた慢性腎臓病患者は、体のどこかで炎症が起きているかどうかを示すサイン(炎症マーカー)が大幅に減少した。一方で、歩数の少ない患者にはその改善が見られなかった。

大規模な人口研究では、定期的に歩く人は、激しい運動をしていなくても炎症マーカーのレベルが低いことが示されている。このことは、中程度の歩行でも炎症を減らし、心血管の健康を改善することを示唆している。
そして、高血糖だと体の「糖化」が進み、それにより炎症が進行します。炎症は、疲労や老化の原因になるので、何とかして抑制したいところですね!
【参考論文】
・Zang et al., 2019
・Hamer & Steptoe, 2007
筋力と骨の強化
①下肢筋肉の維持
歩行は、大腿四頭筋・ハムストリングス・ふくらはぎ・殿筋群・足部筋など主要な下肢筋を効果的に鍛え、歩行効率・バランス・関節安定性を改善します。特に、坂道歩行・速歩・ノルディックウォーキングでは、筋活動と負荷が増し、さらに大きな筋力強化効果が得られます。
実際に私もよく歩いているので、太もも、ふくらはぎ、お尻の筋肉が発達しています。整体に行ったときも、「筋肉がすごいですねぇ、何か運動をしているんですか?」と聞かれるほどでした。下半身の筋肉が弱って歩くのがしんどくなり、行動範囲が狭くなると老化が進むと言われています。いつまでも若くいるためには、足の筋肉を維持・強化して、活発に動き回ることが大事ですね!
【参考論文】
・Z. Qun, 2008.
②骨粗しょう症予防
速歩(特に筋力強化運動と組み合わせた場合)は、大腿骨頸部やワーズ三角部の骨密度(BMD)を増加させ、荷重がかかる部位の骨を強化することが示されています。また、高齢者では、歩行量が多く握力が強い人ほど骨吸収率が低く、歩行と筋力維持が骨代謝を守ることを示唆しています。

【参考論文】
・Eun-Nam Lee et al., 2000.
・Sarvestan et al., 2020.
メンタルヘルスへの寄与
・不安・うつの軽減
歩行は気分を改善し、ストレスを軽減するなど、心理的なウェルビーイングを高めます。これらの効果は、他の中等度の運動と同程度であることが示されています。特に、自然環境での屋外歩行は、うつや不安症状を大きく減少させることが示されており、身体活動と自然接触の相乗効果が示唆されています。さらに、歩行にマインドフルネスを組み合わせることで、不安・ストレス・抑うつ症状が大幅に減少し、情動の気づきや集中力が向上します。
つまりは、マインドフルネスの状態で、自然の中を散歩することが最強ですね!私も豊かな自然の公園をいつも散歩しています。気分がとても良くなりますよ~

脳科学的なメリット
健康効果はすごいことが分かりましたね!?でも、歩くことの効果は健康だけではないんです。私も実感として、歩くと頭がスッキリするし、頭が良くなる感じがします。なぜ歩くと頭が良くなるのか、理論的な面も含めて押さえていきましょう♪

認知機能の改善と維持
①記憶力・注意力・処理速度が向上
中年期から始めた高強度の歩行は、身体的に活動的な高齢者において、より良いエピソード記憶と強く関連しています。この種の歩行は、アルツハイマー病予防に関わる記憶システムを強化する可能性があります。
また、縦断データによると、定期的な歩行習慣は加齢に伴う「全体的な認知機能」と「言語記憶」の維持に役立ちます。週に1.5時間以上歩いた女性は、座りがちな同年代に比べて、認知低下や記憶力の喪失が有意に少なかったことが示されています。
私の実感としては、歩くと頭がスッキリするので、集中力が高まると感じています。何かを学んだりするとき、集中できていれば記憶にも残りやすいですよね。あとは、ストレスが減る感覚もあります。ストレス社会で暮らしている我々は日々強いストレスにさらされています。過度なストレスは健康にも良くないですが、集中力や記憶力も低下させます。そのストレスを軽減することでも、記憶力にいい影響が出るとも言えます。

②高齢者の認知症リスク低下
歩行速度や歩行頻度は、認知症リスクの予測指標となります。歩行ペースが遅い、歩行時間が短いといった特徴は、将来の記憶低下と関連しており、歩行が認知加齢に対する予防戦略である重要性が示唆されています。
19件のランダム化比較試験を対象としたメタ分析では、歩行がワーキングメモリ、陳述記憶、実行機能を有意に改善することが示されました。特に軽度の認知低下がある高齢者において効果が大きく見られます。

脳内物質の分泌促進
①BDNF(脳由来神経栄養因子)の増加
まずBDNFが増えると何が起こるかについて説明します。BDNFは「脳細胞の肥料」のような物質であると言われています。特に、記憶に関係している海馬においても、脳細胞を守り、老化を防ぐ役割を果たします。それによって、記憶力、集中力などが向上します。簡単に言うと、BDNFを増やすことで、頭が良くなるんです!ただ、歩くよりもランニングの方がBDNFの増加の点では効果的なので、できればどちらも取り組んでみたいですね。歩く際は、早歩きや坂を上るなどを取り入れることで、強度を上げると効果が高まります。

②ドーパミン・セロトニンの増加
まず、ドーパミンについて、ドーパミンは「行動を起こすためのガソリン」に例えられます。ドーパミンが出ると、やる気やモチベーションが上がるのです。仕事や勉強など面倒なことでも頑張れるようになるんです。また、集中力が持続しやすくなります。楽しいことって集中できますよね?そういう時ってドーパミンが出てるからなんです。つまらないことだとドーパミンがあまり出ない。だから、集中力が切れてしまうのです。私の感覚でも、運動によりドーパミンを増やすと、つまらないことでも面倒だと思わずに取り組むことができます。さらに、気分改善の効果もあり、ストレス軽減や前向き思考にもなれます。歩くことだけではなく、運動した後ってなんか気持ちいいですよね!?

次に、セロトニンについて、セロトニンは心を落ち着かせ、睡眠と集中を支える脳内物質です。先ほどのドーパミンとの関係で言うと、ドーパミンが大量に出て、セロトニンが少ないと、ゲーム、ギャンブル、SNSなどに依存してしまう可能性が高く、言わば中毒状態になりやすくなります。そういったドーパミンの暴走を抑制し、精神を安定させてくれます。
また、歩行との関係で言うと、歩行のような「リズム運動」はセロトニンを増加させます。さらに、外に出て日光を浴びながら散歩するとそれもセロトニンを増やしてくれるのです。とりわけ朝に散歩するのが健康にいいです。なぜかというと、朝に生成されたセロトニンは、約12~14時間かけてメラトニンへと変わります。簡単に言うと、そのメラトニンが出ると、よく寝れるようになるんです。とても重要ですね!!
創造性・集中力アップ
①歩行中に新しいアイデアが生まれやすい
4つの実験では、トレッドミル歩行でも屋外歩行でも、座った状態と比べて創造的アウトプットが有意に増加しました。拡散的思考テストで測定したところ、歩行後も創造性の向上が持続しました。特に屋外歩行は最も新規性が高く質の高いアイデアを生みました。
2023年のエコロジカル研究では、単発の歩行と日常的な歩行の両方が、より独創的な言語アイデアの生成と関連していました。図形的創造性課題では、ポジティブ感情が部分的な媒介要因となり、歩行が直接・間接の両側面から創造性を高めることが示されています。
決められた経路ではなく、自由に歩くことが、アイデアの流暢性・柔軟性・独創性を有意に高めました。この効果は若年者と高齢者の両方で確認され、歩行による創造性向上が年齢を超えて普遍的であることが明らかになりました。
自然環境に触れることは、認知疲労を軽減し、回復的注意を促進することで創造性を強化します。実際に自然の中を歩かなくても、自然をイメージして行う“心の中の散歩”でも、都市環境のイメージより創造性が高まりました。
②集中力の向上
機能的近赤外分光法(fNIRS)研究によると、歩行――特に曲がった道を歩く、マルチタスクを伴う歩行など、認知的負荷の高い状況――は前頭前皮質(PFC)の酸素化を高めることが示されています。PFCは注意・計画・集中力を司る領域であり、歩行中の酸素化上昇は神経活動の改善と注意制御の強化を意味します。
都市と森林での歩行を比較した大規模実験研究では、森林歩行のみが唾液中コルチゾール(ストレスホルモン)を有意に減少させました。コルチゾールの低下は持続的注意力の向上と密接に関連しており、自然環境が精神的疲労を減らし、注意の回復を促すことが支持されています。
身体感覚や呼吸に意識を向ける“歩く瞑想”は、注意の安定性やワーキングメモリを改善し、マインドワンダリング(注意の逸脱)を減少させ、認知制御を高めます。これは、集中した動きによって注意ネットワークが繰り返し強化されることで生じます。
歩行を生活に取り入れる工夫
ここまでで、歩くことの健康面・脳科学面からの効果を理解できたと思います。歩くことに慣れてくると、ただ歩いているだけでも気分がいいので、歩くこと自体を目的として楽しむことができますが、その習慣が定着するまでは結構面倒だったりしますよね!?
どうしたら、歩くことを生活の一部にできるのでしょうか?
1日5分から始める
まずは、ハードルを下げて、ちょっとだけでも毎日続けることが大事です。習慣が全くない方にとっては、30分とか歩くの大変なので、5分だけでも必ず外を歩いてみる。慣れてきたら、10分、15分と伸ばしていき、最終的には30分以上とかになるといいですね。やりすぎも良くないかもしれないけど・・・

是非、あれこれ考える前に、ちょっとでいいので、2週間くらい毎日外を歩いてみましょう。散歩に対する意識がきっと変わるはずです!
車を使わない
こちらは、都市部に住んでいる方に限られるかもしれないですね。徒歩圏内に駅やショッピングスポットなどある場合じゃないと無理かと思います。私は車を持っておらず、自転車もほとんど使わないので、毎回歩いて駅や買い物に出かけています。ちょっと時間がかかることもありますが、駅まで片道20分はかかるのでいい運動になります。特に、暑い日、寒い日、雨の日などは車を使うと便利ですが、歩く習慣をつける意味では、車がない方が都合はいいです。

また、蛇足になりますが、車を持たないことは、経済的なメリットも大きいです。一般的には、車を持つか持たないかで、生涯で2,000万円~4,500万円の差が出るとも試算されます。もちろん、それぞれのライフスタイルがあるので、コストだけの問題ではないです。しかし、この浮いたお金を投資に回して、5%程度以上で運用できれば、経済面において人生はイージーモードになるはずです♪
何か目的を持って散歩をしてみる
私は、よく歴史散歩をしています。お寺や神社、博物館のように、歴史を感じられる場所を散策します。歴史を学ぶことが結構好きなので、歩いてスポットを回ることに充実感を感じていました。そうするうちに、徐々に長距離を歩くことに慣れていった感じです。

このように、何か目的があると人は歩いて動くきっかけになるのではと思います。例えば、花とか紅葉などの植物だったり、昆虫だったり、ウインドーショッピングが好きな方もいるでしょう。何でもいいので、自分が好きなものと結びつけると、無理なく歩くことを習慣化していくことができると思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?みなさんも歩いてみようと思ったのではないでしょうか?
最後に、歩くことに関する賢人たちの名言を紹介していきます!
・アリストテレス
「私たちは歩きながら考える動物である。」
・フリードリヒ・ニーチェ
「すべての本当の思索は、歩きながら行われる」
・夏目漱石
「人は歩くときに限って、考えが整理されるものだ。」

以上、世界、そして日本の偉人たちが言っていることですし、パソコンやスマホを見ている場合ではないです!!今すぐ外に出て、歩いてみましょう!?

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