温泉に入って、ふうっと息を吐く。
それだけでも、十分に幸せだと思います。
でも、40歳になった今、私は温泉をもう少し深く楽しんでみたくなりました。
なぜ、このお湯は白いのだろう。
なぜ、あちらのお湯は肌がすべすべするのだろう。
同じ「温泉」なのに、何が違うのだろう。
そんな問いをひとつ持って出かけたら、いつもの入浴が、小さな探検に変わる気がするのです。
これまでは子供優先で旅行先を決めてきました。ただ、80歳くらいまで生きると仮定すると、40歳は人生の折り返し地点・・・私ももっと自分自身がやりたいことに集中していきたい。

これから日本各地を旅して、歴史のある町を歩き、その土地の温泉に入る。気になるボルダリングジムにも立ち寄ってみたい。そして、出会った景色やお湯の感触を、自分の言葉で残していく。
その第一歩として、今回は温泉の基本と、10種類の「泉質」を整理します。私も学びながらの出発です。一緒に「次に入りたい温泉」を見つけてみませんか!?
温泉の名前が読めると、旅の目的がひとつ増える
温泉施設で見かける「ナトリウム-塩化物泉」といった表示。少し難しそうですが、お湯にどんな成分が含まれているかを教えてくれる名前です。
温泉のうち一定の基準を満たす「療養泉」は、10種類の泉質に分類されます。ただし、10個の箱にきれいに分かれるわけではありません。ひとつの源泉が複数の特徴を持ち、長い泉質名になることもあります。

また、「アルカリ性」「高温泉」などは、泉質とは別にpHや温度を表す言葉です。まずは成分による分類と区別しておけば十分でしょう。日本温泉協会「温泉分析書の見方」
(※pHとは、温泉水が「酸性・中性・アルカリ性」のどれに当たるかを示す数値です。温泉の肌触りや刺激の強さを知る目安になります。)
「今回は硫黄泉に入ってみたい」
「前のお湯と、肌触りを比べてみたい」
名前を少し知るだけで、温泉を選ぶ楽しみが増えそうです。
まずは一覧で。10種類のお湯に出会う旅
最初に、それぞれの特徴と代表地を見渡してみましょう。温泉地の中でも源泉によって泉質は異なるので、訪問時には施設ごとの表示を確認します。
| 泉質 | どんなお湯? | 代表的な温泉地 |
|---|---|---|
| 単純温泉 | 成分濃度が比較的低い | 下呂温泉〈岐阜〉 |
| 塩化物泉 | 塩化物イオンが主体 | 熱海温泉〈静岡〉 |
| 炭酸水素塩泉 | 炭酸水素イオンが主体 | 川湯温泉〈和歌山〉 |
| 硫酸塩泉 | 硫酸イオンが主体 | 法師温泉〈群馬〉 |
| 二酸化炭素泉 | 二酸化炭素を含む | 長湯温泉〈大分〉 |
| 含鉄泉 | 鉄を含む | 有馬温泉〈兵庫〉 |
| 酸性泉 | 水素イオンが多く、酸性が強い | 玉川温泉〈秋田〉 |
| 含よう素泉 | よう化物イオンを含む | 強首温泉〈秋田〉 |
| 硫黄泉 | 硫黄成分を含む | 日光湯元温泉〈栃木〉 |
| 放射能泉 | ラドンを一定量以上含む | 三朝温泉〈鳥取〉 |
分類・代表地は日本温泉協会「温泉の泉質のいろいろ」を参考にしています。
地名を並べてみると、この表が旅の行き先リストにも見えてきます。まずは近くの一湯から。いつか遠くの温泉にも、という楽しみ方をしたいと思います。
色・におい・肌触りから、お湯の個性を知る
ここで大切なのは、泉質名だけで感触がすべて決まるわけではないこと。同じ種類でも、ほかに含まれる成分やpH、温度などによって印象は変わります。

1.単純温泉――穏やかな違いを感じてみる
「単純」と聞くと、特徴がないように思えるかもしれません。でも、これは成分濃度などに基づく分類名です。
色やにおいのくせが比較的少なく、柔らかな感触を楽しめるお湯があります。様々なミネラルを含み、健康増進や疲労回復に向きます。アルカリ性のものでは、すべすべした肌触りを感じることも。「派手さがないお湯にも違いはあるのか」という問いを持って入ってみたい泉質です。日本温泉協会
2.塩化物泉――「塩のお湯」を意識してみる
塩分を含むことが特徴ですが、色やにおい、肌触りがすべて同じになるわけではありません。
自律神経系や内分泌系を整えます。保温効果が高く、冷え性や神経痛に効くと言われています。発汗作用に優れているため、水分補給には気をつけないといけません。
ちなみに、私が行ったことのある熱海のホテル TAOYA熱海はカルシウム・ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉でした。きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症などに効果があるようです。

さらに、伊豆熱川駅近くのホテルカターラは、ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉です。神経痛、筋肉痛、関節痛などに効くようです。

3.炭酸水素塩泉――すべすべの感触を探してみる
なかでもナトリウム-炭酸水素塩泉は、すべすべした感触を楽しむお湯として紹介されます。ただし、色やにおいは一様ではありません。
名前に「炭酸」がありますが、次に紹介する二酸化炭素泉とは別の分類です。必ず肌に泡が付くわけではない、と覚えておきましょう。清涼感を感じる湯質であるため、入浴後は保湿にも気を配りたいところです。福島県観光物産交流協会
4.硫酸塩泉――透明なお湯にも目を向ける
外傷や火傷に良いカルシウムー硫酸塩泉、高血圧症や動脈硬化症に良いナトリウムー硫酸塩泉、高血圧症や動脈硬化症に良いマグネシウムー硫酸塩泉の3種類があります。
ちなみに、私が行ったことがある箱根のホテルリカーヴは、硫酸塩泉/塩化物泉/カルシウム・マグネシウム硫酸塩泉です。神経痛/筋肉痛/関節痛/うちみ/疲労回復/健康増進/病後回復期/冷え性に効果があるとされています。特に、大涌谷から引き込んでいる「濁り湯」の檜風呂は源泉かけ流しで、入っていてとてもリラックスできました!!

5.二酸化炭素泉――肌に付く小さな泡を眺める
肌に細かな泡が付くことがあるお湯です。色やにおいに加えて、「泡」という観察の楽しみがあります。
炭酸ガスが皮膚から浸透し、毛細血管を拡張して血流促進や血圧降下をもたらします。高血圧や心臓病、糖尿病、肝臓病などに効果があるとされています。
6.含鉄泉――お湯の色が変わる不思議
鉄を含むお湯は、空気に触れて酸化することで赤茶色に変わることがあります。湧き出した直後と、浴槽にたまった後で印象が違う場合があるのです。
関節痛や皮膚病、更年期障害に良いとされています。
7.酸性泉――刺激の強さも、お湯の個性
酸性が強く、肌がピリピリする場合があります。色やにおいは、含まれるほかの成分によっても変わります。
強い殺菌作用があり、肌への刺激が強いものの、皮膚に関する症状に良く効くとされています。
8.含よう素泉――表示を読む楽しみがあるお湯
よう化物イオンを含む泉質です。色やにおい、肌触りだけで、この成分の存在を判断することはできません。
殺菌効果が高く、全身の新陳代謝を促進します。海水が温泉源である場合が多く、温まり方が早く発汗作用も高くなります。
9.硫黄泉――色とにおいが記憶に残る
乳白色のお湯を思い浮かべる人もいるでしょう。白濁は硫黄化合物の細かな粒子によって生じる場合があります。一方、硫黄成分を含んでも無色透明のお湯もあります。日本温泉協会「温泉の色」、福島県観光物産交流協会
古くから「万病に効く」と言われ、抗酸化作用に優れています。
10.放射能泉――見えない成分を知る
ラドンを含む泉質です。名前にはインパクトがありますが、ラドンそのものを色やにおい、肌触りで確かめることはできません。
幅広い症状に効果が期待できると言われています。
効能は「何にでも効く」ではなく、適応症を読む
温泉を選ぶとき、効能も気になります。
ここでは、温泉療養で改善が期待される症状である「適応症」を紹介します。入浴すれば必ず治るという意味ではなく、治療の代わりでもありません。
| 泉質 | 主な泉質別適応症〈入浴・抜粋〉 |
|---|---|
| 単純温泉 | 不眠症、自律神経不安定症、うつ状態 |
| 塩化物泉 | 冷え性、末梢循環障害、皮膚乾燥症 |
| 炭酸水素塩泉 | 冷え性、末梢循環障害、皮膚乾燥症 |
| 硫酸塩泉 | 冷え性、末梢循環障害、皮膚乾燥症 |
| 二酸化炭素泉 | 冷え性、末梢循環障害、自律神経不安定症 |
| 含鉄泉 | 固有の浴用適応症は設定なし |
| 酸性泉 | アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬など |
| 含よう素泉 | 固有の浴用適応症は設定なし |
| 硫黄泉 | アトピー性皮膚炎、慢性湿疹など |
| 放射能泉 | 高尿酸血症〈痛風〉、関節リウマチなど |
療養泉には、これらとは別に疲労回復などの一般的適応症もあります。また、皮膚の症状が適応症に挙がっていても、肌の状態や刺激への敏感さによっては入浴が適さない場合があります。東京都保健医療局
含鉄泉の「鉄欠乏性貧血」、含よう素泉の「高コレステロール血症」は飲用の適応症です。入浴の効果と混同せず、飲泉は飲用が認められた施設の案内に従います。日本温泉協会
次の温泉では、「ひとつの問い」と「三行の記録」
10種類を一度に覚える必要はありません。私はまず、その日に入るお湯について、ひとつだけ問いを持つことから始めたいと思います。
「この色は何の成分によるもの?」
「前に入ったお湯と、肌触りはどう違う?」

そして、湯上がりに三行だけ記録します。
- お湯の情報: 施設名・源泉名・泉質
- 自分の感覚: 色・におい・肌触りで印象に残ったこと
- 次の問い: 気になったこと、次に比べてみたいこと
写真がなくても、言葉を残しておけば、自分だけの温泉ノートが育っていきます。撮影は施設のルールに従い、浴室内で無理に記録を取らず、まずはゆっくり楽しむつもりです。
40歳から、行きたい場所が増えていく
歴史のある町を歩いて、その土地のお湯に入る。
初めてのボルダリングジムで体を動かし、休憩を挟んで温泉へ向かう。
何もしない休日に、近所の一湯をじっくり楽しむ。
そんな時間を、これから少しずつ増やしていきたいと思います。

私にとって「本格的な温泉巡り」は、遠くの有名温泉を次々に制覇することだけではありません。目の前のお湯に興味を持ち、知って、感じて、自分の言葉で残していくことです。
40歳から始めれば、これから何種類のお湯に出会えるでしょうか。
まずは次の一湯で、泉質の名前を確かめてみる。
そこから、私の温泉巡りを始めます。
あなたは、どのお湯から入ってみたいですか??
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